kiringrafica

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2006/11/30

—ピーター・グリーナウェイ初期短編集1/ピーター・グリーナウェイ

もうこうなったら、初期の作品から観てみよう。
4編が入っていたが全部映像だった。映像とストーリーは別物で、それらが一緒に流れている感じ。そういうのに虚構そのものを見ている気がして、やっぱりこの人のことは信用ならないな、と思った。
それでもどこか、映像の対象に共感するところがある。延々と単語練習のテープが流れている作品の中で、「M, music!」とそこだけ!がついたところにも、そうだよね、と思った。

2006/11/30

*–ピーター・グリーナウェイ初期短編集2/ピーター・グリーナウェイ

短編集その2。
3話が収められていた。
架空の話しがまた続く。この人の「架空の話し」って虚構のような気がして、信じる気がしない。シニカルというか、馬鹿にしているというか。人のこと信用していないんだな、って感じる。それでも映像に対する敬意はすごく払われていると感じるから不思議。
最初の「vertical features remake」の垂直構造の映像は、連続してあるテーマのもとにたくさんの景色を観ると面白いものだな、と思った。
「H is for house」の映像もきれいだったし、流れる単語と映像の微妙な接点もよかった。

でもやっぱり信用できない!

2006/11/27

*–薔薇の名前/ジャン=ジャック・アノー

友だちが好きだと言うのを聞いて読んだウンベルト・エーコ「薔薇の名前」がとても面白かった。それでつい借りてしまった。
原作ではあらすじがあって、そこに食い込みからまる修道院の矛盾や修道僧の人間性が面白かったのが、あらすじだけになっていた。原作では、いろんなことに驚愕しながらあらすじが知りたくて読み進む感じだったから、絶対原作を先に読むべきです。
映画と原作は別物、と割り切ったらそれなりに面白い映画なんじゃないかな。寒々しい修道院としょぼしょぼの修道僧たちなどの感じがよかった。修道僧のアドソが美男子すぎてそこから浮いていた。私は冷蔵庫に放置されたキュウリのような、腰の引けた青年を思い浮かべていたのだけれど。

2006/11/27

***エル・スール/ビクトル・エリセ

タイトルは南、という意味のようだ。スペインの北部の話し。1983年作。
女の子(ソンソレス・アラングーレン)がすっごくいい。
映像がとってもきれい。暗い画面の端の青い光から朝が展開していくところなど、日々のとどめられない美しさに溢れている。
全体に空気が薄い感じ。行き詰ったストーリーと、女の子の表情と、青白い映像とがすごく合っていた。女の子を通じてほんのり白い光が入るところもよかった。

2006/11/26

**-アパートの鍵貸します/ ビリー・ワイルダー

この作品は、美術監督がスタジオセットで初めて天井をつくり、天井を画面に入れた映画だと建築関係の本に書いてあった。なるほど大空間の天井の照明と机がずららららーっと並んでいるオフィス空間がよかった。
映画は役者の動きがコミカルで、音楽のないミュージカルを見ているようだった。ショートカットの女優がかわいかった。クリスマスの、ハッピーエンドのお話し。アメリカ映画ってわかりやすいな。

2006/11/23

***駅馬車/ジョン・フォード

1938年の西部劇。
大昔の映画と思っていたら、すっごくおもしろかった!勇者と悪者など役回りがはっきりしていて、正義は勝つ!に溢れていて、古きよき時代って言葉を思い浮かべた。テンポがよくて、特に大勢の馬が疾走するアパッチとの戦いは大興奮。インディアンは悪者として描かれており、銃撃でばしばし倒れていくのもこの時代らしい。

2006/11/20

**-英国式庭園殺人事件/ピーター・グリーナウェイ

前回観たこの監督の作品がすごくって、しばらく封印していた。
やっぱりすごくきれいな映像。豪華絢爛で皮肉たっぷりで観ていて楽しい。スケッチのシーンと雲の影がさっと変わるところが好き。
でももうちょっと長くていいから、どろどろを描いて描いて描ききってほしかったな。冒頭の音楽とカリグラフィと会話の切り替えが一番どきどきしました。

2006/11/17

*–デ・ジャ・ヴュ/ダニエル・シュミット

1987年の映画。デジャヴ(既視感)って、初めてなのにどこかで見たことのあるような気がすることだけど、この映画では幻を見ることをデジャヴと言っていた。
どんどん狂っていく感じ、わけわからなくなる感じがよかったけれど、ストーリーの難しさと眠気とで最後は本当にわけわからなくなってしまった。暗闇の顔や肖像画がとても恐かった。

2006/11/15

**-バタフライ・キス/マイケル・ウィンターボトム

1995年イギリス映画。とても不自由に生きるふたりの女性の話し。
。。。
観終わったあと、ハトは「ひどい映画だね」と言った。たしかに救いようがなく、恐ろしい展開で見続けるのが怖かった。
一方で、俳優、色彩、展開、音、そんなのがあるひとつの世界をちゃんとつくりあげると思った。孤高とでもいうのかな。そのてっぺんにあるものには全く賛成できないけれど、そこまで高く積み上げたことはすごい。映画として、好きだ。
砂浜のシーンは、透明感溢れる写真をみているよう、とてもきれいだ。でも「きれい」と発することをためらうような、受け容れがたさがあった。

ビョークの歌がちょっとだけ流れた。

2006/11/14

*–赤ちゃん泥棒/コーエン兄弟

たまにはアメリカ映画が観たいなぁと思って借りてきた。87年だからけっこう前の作品。
コーエン兄弟の作品は、「ファーゴ」とか「ブラッド・シンプル」とか「ミラーズ・クロッシング」のようなシリアスな方が好き。でも今日は「ビッグ・リボウスキ」みたいなハチャメチャな映画が観たくって、これはまさにそんな一本だった。満たされた。この監督は映画が好きなんだなぁというのをつくづく感じる。

2006/11/13

*–サン・ロレンツォの夜/タヴィアーニ兄弟

今度は第二次世界大戦時のトスカーナ地方のある村の話し。
ずいぶんいろんなことが起こる映画だった。老人が椅子に座って考えるシーンがよかった。
この兄弟が撮ると、戦時中という感じがあまりしない。あくまで地方の村民の話しで、戦争は背景。

2006/11/13

*– ビリディアナ/ルイス・ブニュエル

1961年、生まれるずいぶん前の映画だ。修道僧になろうとしている女の人の話し。ことごとく思い通りにいかないストーリー。それがこの映画の面白いところかもしれないが、私はどう受け取ればいいのかわからくなってしまった。浮浪者がいっぱい出てきたが、みんなどこかしら面白かった。

2006/11/11

日陽はしづかに発酵し・・・/アレクサンドル・ソクーロフ

ソクーロフを初めて観る。眠らないようにがんばろう。
オレンジ色の画面を見ながら、これは映画じゃなくて映像だなぁ、他人の夢をみているようだなぁ、と思っているうちにやっぱり眠気がやってきて眠ってしまった。眠っても、映像の延長のような、うつろな夢ばかり見た。映像と自分の夢との境界があいまいになって、たくさん寝言を言っていたようだ。
この映画は最後まで観ないと何も言えないなぁと思っていたので残念。いつかまたみたい。

2006/11/09

*–さよなら子供たち/ルイ・マル

1週間ほど実家に帰省した。実家でビデオ見よ、とテープを入れたらビデオデッキが壊れていることが判明。2年くらい使っていなかったそうだ。

借りてきた数本の中から久しぶりということでハトがリハビリ用の一本を選んでくれた。第二次世界大戦時のフランスの寄宿寮の話し。淡々とした、とても切ない映画だった。最初から最後まで寂しい映像だった。チャップリンの映画を観ているシーンで、げらげら笑っているのがラブシーンになったらぴたりと静かになるところがよかった。

2006/10/31

***カオス・シチリア物語/タヴィアーニ兄弟

今度は1984年の作品。「バビロン~」よりこっちがずっと好き。ごく自然に撮っているのに、まるで絵画の中から抜け出したような映像。4話+エピローグの5つのショート・ストーリーで構成されているが、それらのつなぎ方も何気ないようで、心に残る。
「大きな甕(カメ)」の話しがよかった。満月間近の月の光のもと、カメを囲んで踊るところなんか最高だ。
あと「月の病」もよかったな。月の病を病んだ男が満月に狂って木を揺らすところ、壮絶で悲しげだった。私も月の病を病んだらやっぱり木を揺らして耐えるだろう。そう思った。
まるで自分が話しの中にいるかのように感じた。そしてまた旅に出たくなった。

とけっこうおもしろそうな感想を書いていますが、隣でハト氏はグーグー寝ていました。190minと長大な作品です。

2006/10/27

**-オリーブの林をぬけて/アッバス・キアロスタミ

キアロスタミ作品を初めて観る。
オリーブの林をざざざざっと風がぬけるところがたまらなくよい。中東を旅行したことが一度だけあるけれど、ここに昔住んでいたことがあるなぁと思うくらい、本当に好き。観ていて遠い気持ちになった。旅行したいな。
最後の丘の上からのシーンがとてもよかった。ハトもそこをよかったね、と言っていた。
あと、男の子が女の子をくどく台詞がめちゃくちゃなところが素人っぽくてよかった。

2006/10/26

**-グッドモーニング・バビロン!/タヴィアーニ兄弟

1987年の作品。映画への愛を感じる作品だった。
森の中に立つ象の像がよかった。映画の中の映画のシーンが、広々とした感じがして好きだった。
映画に対してもだけれど、もうちょっと大きな愛も感じました。

2006/10/24

*–ふたりのベロニカ/クシシュトフ・キェシェロフスキ

またキェシェロフスキ。やっぱり影がきれい。人形劇のところがよかった。音楽が耳に残る。

そういうのは印象深いけれど、ストーリーに首をかしげる。二人いても描くベロニカは一人で十分なのでは。

2006/10/23

*–サンキュー・スモーキング/ジェイソン・ライトマン

友だちと映画を見にいった。映画館だ。やっぱり画面がきれいだなぁ、音も迫力あるなぁと感心する。
映画もおもしろく、楽しめた。テンポがよく、全体的に整理されている感じ。そこにアメリカっぽさを感じた。
息子の存在がよかった。俳優(キャメロン・ブライト)も。

2006/10/22

**-トリコロール赤の愛/クシシュトフ・キェシロフスキ

最後は赤です。3本目だが、どんどんこの監督のよさが染みてくる。モチーフもすごく光っている。この作品が一番気合入れて赤くしてあるように感じた。男優(ジャン=ルイ・トランティニャン)の表情がよく、ストーリーも楽しめた。暗闇で話しているところが好きだった。

独立した作品としてすばらしい上に、色に重ねられた連作としての小さな鍵がいろんなところにある。小さな鍵はひとつひとつのストーリーの中にもあって、静かにわくわくする。
けれど最後の連作サービスは大きすぎ、不必要と思った。

もうひとつ、ヨーロッパの映画を観ていて、男女の距離が日本とは違うなぁと思う。日本人(私の感覚)は50cmくらいでyesかnoか迫られるが、この映画では5cmくらいだ。そんな近い距離で、相手の愛情を受け止めつつ、noと言ってる。恋人同士になれなくても、異性が異性として本当に近くまで近づいているのって、うらやましいように感じた。